エスカレータと動く歩道

コロナ禍が継続して久しい。東京都など、都市部でも一時の「外出自粛」時と違い、かなりの人出が戻ってきたように感じる。筆者は東京出張時に東京駅を利用することが多いが、京葉線への移動時に利用するエスカレータや動く歩道もかなりの「密」になっている光景を目にする。

エスカレータに関しては、昔から「歩かないで立ち止まりましょう」ということが言われ続けているが、いまだに「片側によって立ち止まり、もう片側は空けておく」という習慣が根強い。関東だと立ち止まるのは「左側」だし、関西だと「右側」という違いはあるが、「急いでいる人のためにもう片側は空けておく」という、ある意味マナーのようになってしまっている。

もちろん、本来は、

エスカレータは「立ち止まって」

利用するものだ。東京駅などではエスカレータを歩かないように看板を掲示したりアナウンスしたりと、様々なキャンペーンを行っているようだが、なかなか定着しない。筆者も昔は歩くことが多かったが、反省して今は立ち止まって利用するようにしている。長年の習慣を変えるのは長い時間がかかるので、地道に啓蒙していくしかないか…とも思う。

一方、「動く歩道」であるが、最近、都市部の駅構内に限らず、空港等でもよく見かけるが、「立ち止まって」利用する人がかなりの割合で存在する。あ、あのぉ、

動く歩道は「歩くのが基本」

なんですよ! これ、エスカレータの場合と何か勘違いしている人が多いのか、アナウンスで「走らないでください」と言っているのを勘違いしているのか、さも「自分は正しいことをしているんだ!」という感じで堂々と動く歩道の真ん中にどっしりと構えて動かない人が散見される。

動く歩道は、文字通り「歩道」なので、そこを歩くことが原則である。「走る」のは危険がともなうので避けるべきだ。だから「走らないでください」とアナウンスがあるのだ。しかしよく聞いてほしい。「歩かないでください」とは言っていないのだ!

動く歩道の目的は「水平方向に速く移動する」ことであり、エスカレータのように「(垂直方向に)楽に移動する」ことではない。ここのところを勘違いしている層が相当数いるようだ。

もちろん、動く歩道も「歩道」なのだから、立ち止まっても構わない。荷物をたくさん持っている場合など、立ち止まっているだけで移動できるのだから、そういった意味では多少は「楽に移動する」目的に利用しても良いかもしれない。しかしその場合は、「本来の目的に沿って歩いている人の邪魔にならないように道を空ける」のがマナーだ。動かない通常の歩道のことを考えればこのことは当然だと思うのだが。

  • エスカレータは「立ち止まって乗るもの」
  • 動く歩道は「歩くもの」、ただし、「立ち止まって」も良いがその場合は道を空けよう

賢明な諸兄には、「エスカレータ」と「動く歩道」の違いをきちんと意識して、適切な利用をお願いしたいところだ。

令和2年10月28日 初出