ギガが減らないのに

令和2年9月16日に菅義偉内閣が発足した。発足直後から様々な政策を進めつつあるが、一般受けしそうな政策として「携帯電話料金の値下げ」が挙げられるだろう。

電波という「国民の共有財産」を利用しながら、実質新規参入が困難で、主要3社で寡占状態にあることが携帯電話料金の高さにつながっているということは以前から指摘されていた。この不景気な時代に高い営業利益を得ていることも指摘されている(利益を得ることは決して悪いことではないが)。

携帯電話料金は、各社で様々なプランが用意されていてわかりにくいといえばわかりにくい。TV等のメディアでもCMが打たれているが、結局プランの詳細は別途ウェブなり店頭なりで確認しないと本当のところはわからない。

さて、ある携帯電話会社のCMで最近気になる表現がある。それは、

ギガが減らないのに

なんちゃら…とかいうものだ。な、なんだこれ!? 用語の使い方が間違ってますよ!

賢明な諸兄は当然わかっていると思うが、「ギガ」というのは国際単位系(SI) における接頭辞のことで、「キロ」の100万倍 = 「メガ」の1000倍 = 109のことだ。「キロ」等と同じで、これ単体では用いず、「ギガバイト」のように、何らかの単位とともに用いる。

最近の携帯電話料金は、その月の通信容量の最大値を基に「○○ギガバイトまでは△△円」というように設定されている。「ギガが減らない」というのは、この「○○ギガバイト」の容量制限のことを指しているようだ。

もうね、2段階に間違ってますよ!

  • 「ギガ」単体で使うことが間違っている。それを言うなら「ギガバイト」だろうが!
  • 「ギガが減らないのに」じゃなくて「容量が減らないのに」だろうが!

CMも含めた既存メディアの体たらくぶりはひどいものだが、まぁなんというか、こんな表現、オンエアされるまで誰かひとりでも指摘しなかったのだろうか。「ふいんき」だけで「あるある」で本質も理解せずノリだけで物事を進める層がそんなにいるんだろうか? 理解に苦しむし、「正気ですか?」と言いたくなる。

技術畑ではない人・メディアならともかく、いやしくも通信会社そのもののCMである。こんな表現のCMをオンエアしていたら、その会社の技術レベルまで疑われるというものだ。ほんと、わかってやってます? 本当はわかっていないんじゃないの?

それとも、専門家以外にはどうせわかりっこないから、適当にごまかしちゃえってことなんだろうか。いずれにしても、言葉の意味や由来・語源を知って、ちゃんと正しく使おうよ…はぁ。

令和2年10月14日初出
令和2年11月17日 改訂